トリウム原子炉革命 古川和男・ヒロシマからの警告

2017/3/7 14:33 投稿者:  manager

トリウム原子炉革命

古川和男・ヒロシマからの出発

発行所    小石川ユニット

発売元 株式会社 展望社

 

本書は、小著ではあるが、一九四五年米国による原爆の開発、それの広島への投下に始まり、二〇一一年の福島でのウラン軽水炉原発事故により一段落のついた人類の前あるいは第一期とよばれる原子力時代を要約・俯瞰する試みである。
この時代は米ソの冷戦の時代であり、戦時に続いて軍と軍需産業が多大の発言力を行使していた。すなわち核弾頭の製造に多量のプルトニウムが必要だったので、商業用原子炉の製造にあたって、これを副産物として産する天然ウランが選ばれ、それをきわめて微量にしか産せず安全なトリウムが忌避された。
加えて陸上の商業原子炉に先立って原子力潜水艦の機関(エンジン)の製作が急がれ、これに燃料体にウランが固体化されて装備され、これが陸上の平和目的の商用原子炉に撥ね返ることになった。ワインバーグ所長に指導されたオークリッジ研究所(ORNL)のトリウム熔融塩炉の開発研究は、その実験炉段階での未曾有の成功にもかかわらず、既得権利を獲得していた政産軍複合体の圧力により、陰謀的に予算を停止され、挫折せしめられた。
古川和男(一九二七~二〇一一)はこのORNLの研究に、一九五九年という非常に早い時期から注目し、一九六七年にはそこを訪ね、その成功を目撃していた。そしてその研究を引き継ぎ発展させ、一九八一~一九八五年にFUJI(不二)トリウム熔融塩核エネルギー協働サイクルとして完成した。これはワインバーグが賞讃した達成だった。しかしワインバーグが米国で蒙ったのと同じ理由で、日本で実用化の道を阻まれた。
一九七九年にスリーマイル島で事故が発生し、この結果米国では原発の新設が禁止になったのに対し、日本ではラッシュ状態になり、ついに二〇一一年の3・11を迎えたわけである。古川学が採用されていたならば、起こらなかった事故であった。
氏は二〇一一年五月刊の自著『原発安全革命』(二〇〇一年の初版名は『「原発」革命』)で己の「不遇」を「原理的に正しい技術も、人間社会のさまざまな動きの中で、ときに不当な扱いを受けることがある」と記している。ただし、「世界、人類、地球」が危機的状況にあると認識していて、その救済がトリウム熔融塩炉に依る以外に無いと訴えていた。その反響は世界に広まっており、中国上海では大型のトリウムプロジェクトが始動しているのに対し、日本での疎外はまだ改まっていない。抵抗はいまだに強大である。

まえがきより

 

1 ウラン─プルトニウムを止めよ─脱原発か、「良いことづくめ」の原発か
ウランとトリウム/固体燃料か液体燃料か/「原発は化学プラント」──古川和男
11・3・11フクシマの前と後/ウラン軽水炉の錯誤/原子力ムラからの古川支持──豊田正敏
高速増殖炉中止を主張/原子力をやめるか、トリウムを併用するか
「第三の道」をめぐって/潤沢な電力の必要性

2 ヒロシマからフクシマまで─被爆者のわが妻と古川和男が迎えた3・11
『樺太よ遠く孤独な』と『ヒロシマまでの長い道』/樺太を上回る理不尽に遭遇――『微笑の沈黙』
木寺黎二(戦前)と松尾隆(戦後)の間――ペレヴェルゼフ『ドストエフスキーの創造』
到達点としてのヒロシマ――『ドストエフスキーとは何か』
デュラスとレネ――『ヒロシマわが愛』/古川和男出演のシアターTVを傍聴
辛島和子の見舞客の中に古川が居た可能性/思想書としての『「原発」革命』
ウィグナーとワインバーグ――選択されたトリウム
容れられなかったFUJI――単純小型密閉式溶融塩炉/ドフトエフスキーの奇人

3 リリエンソールに学ぶ─原子力の王道にして「第三の道」
反核兵器と反ウラン原発が一体だった唯一の例/水爆実験に反対して米原子力委員長を辞任
スリーマイル島原発事故を予見・警告/古川が翻訳した遺著『岐路にたつ原子力』
「福島」にも当てはまる「スリーマイル島」/原子力を秘密化、複雑化した軍産複合体
「もっと安全で、もっと複雑でない」原発システムを

4 FUJI(不二)の発明─世界展開可能な小型熔融塩炉
潰された「原理的に安全な原発」/二階堂進会長「トリウム利用推進議員懇話会」の崩壊
トリウム原子炉FUJIに海外は素早く反応/国内でも評価と支持が拡大
『「原発」革命』の出版と好意的書評─二◯◯一年

5 「核拡散防止への実効ある提言」─佐藤栄作記念財団賞を受賞
「原発全体主義」に抗した佐藤栄佐久/核開発の副産物として登場した「原発」
核兵器廃絶に寄与する「原発」の探究/次世代原子力システムの研究テーマの一つ
環境と核拡散問題に「安全原発」を提唱/「核兵器の廃絶と平和利用」
「核兵器廃絶運動への提言」/佐藤栄作記念財団賞を受賞した論文
原子力ムラに屈服・加担したメディア

6 トリウム原子炉開発が遅れた理由─冷戦下、軍事優先に押し潰される
広島・長崎の人々の身代わり──大分市中島小の同窓/「生涯最後の仕上げ」
米国での熔融塩炉潰しと軌を一つにして/不当な解説が開発を妨害
「熔融塩高速炉型」に反対する理由/軍事的にゆがめられた〝原子力界〟
ワインバーグ排除と古川排除の共通性

7 3・11から『原発安全革命』へ─戦後学生運動と原水禁運動
ヨッポイマーチ=ヨッポイマツ──『悪霊』と樺太/私が生きて知っている「この三、四〇年の日本」
核分裂は自然現象、有効利用すべき/石井保夫『わが青春の国際学連』に寄せて
丸浜江里子『原水禁署名運動の誕生』に寄せて/安井郁・田鶴子夫妻と吉田嘉清

8 「トリウム熔融塩炉の歴史と新しい役割」─古川和男は生きている
余命数ヶ月、覚悟して臨んだ没年の講演/何も言っていないに等しい「脱原発」
最後の年がフクシマと重なった人生/ウラン原発のみを原発とみなす共通性──飯田哲也と寺島実郎
ウラン軽水炉は暗黒の前原子力時代の産物/憲法九条の世界化につながるFUJI
核不拡散・核兵器廃絶こそ真の主題

9 世界を救済するトリウム原発─ワインバーグが残した「梵鐘」
古川によってヒロシマに開眼したワインバーグ/米国で挫折した試みを日本に期待
ウランは悪であり、トリウムは善である

 


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