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歴史を知ればもっと面白い韓国映画 高ヒット
2017/3/3 18:43 投稿者: manager (記事一覧) [ 633hit ]


はじめに 韓国映画は歴史がわかると面白い


「いやぁ、いい映画だったぁ!」。友人は公開されたばかりの「ラブストーリー」を観た感想を、こう興奮気味に話した。「ラブストーリー」 (原題「クラシック」二〇〇三年)は、悲しい結末に終わった母の恋が、思いがけない展開によって娘の幸せにつながっていく物語。実に爽やかで後味がいい。ヒロインを演じたソン・イェジンもかわいかった。韓国映画が大好きな友人は、公開と同時に観に行って大いに感動したわけである。
しかし残念なことに、彼女は映画の中で母の恋を引き裂いた戦争を、朝鮮戦争だと勘違いしていた。実際にはベトナム戦争なのである。朝鮮戦争でもベトナム戦争でも戦争に変わりはなく、勘違いしたからといって話がわからなくなるわけでもない。どちらも学校では教えてくれないし、日本人には想像が及ばない点でも同じだ。
だがあれがベトナム戦争で、それが韓国にとってどういうものであったかがわかれば、あの映画は一層心に滲みるものになるのではないだろうか。母の恋は軍事政権下の出来事で、思い合う二人を引き裂いた背景の一つが東西冷戦であったことを知れば、ヒロインの母ジュヒと母を慕う青年テスがデモに参加する場面の意味も理解できる。愛し合う二人を翻弄した過酷な運命は、当時の政治情勢と深く関わっていたのだ。だから泣けるのである。
私には忘れられない苦い思い出がある。子どもの頃、両親とタクシーに乗った時のことだ。ちょうどその時、ラジオが韓国への円借款についてのニュースを伝えていて、それを聞いた運転手さんが、いきなり韓国を罵倒し始めたのだ。
両親は困惑して無言になった。子どもの私はもっと困って、身を縮めるようにして下を向いていた。気まずい思いで沈黙している私と両親をよそに、運転手さんの罵倒は続く。たまたま乗ったタクシーで、隣国への憎悪を当然のようにたたきつけられて、私はいたたまれない思いだった。在日コリアンが、第三国人という差別語で呼ばれていた時代である。
隣国との間に立ちはだかる壁は、限りなく厚く高かったのだ。あれは一九六〇年代後半、朴正凞政権の時代だった。「ラブストーリー」で、母ジュヒが愛するジュナを泣きながら見送った、ちょうどその頃に私が体験した出来事である。韓国は文字通り「近くて遠い国」だった。
この絶対に超えられないように思えた壁の一角を、映画が崩したのである。民主化宣言後の勢いと自信を背景に、市場拡大という時代の後押しを受けて。私がタクシー運転手さんの罵倒を聞いていた頃に起きていたことが、世代をつなぐ恋物語に仕上げられ、日本で公開されて多くの観客を集めた。韓国と日本の観客が、同じ映画を観て泣いたのだ。感無量である。

 

歴史を知ればもっと面白い韓国映画

2006年10月25日 第1刷発行

著者    川西玲子
イラスト    黒田邦雄
装丁    田中 等
本文デザイン    デルタネットデザイン
編集協力    株式会社スタジオ・フォンテ

 

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